月ごとの年中行事を大切に。はじめての室礼[8月:お盆]

日本の年中行事に彩りを添える「室礼(しつらい)」の習慣を取り入れれば、和の文化や季節の移ろいがより身近に感じられます。

心を添える室礼を現代の暮らしへとつないでいる「室礼三千」師範の宮田由美子先生に、自宅でできる月ごとの室礼をご提案いただくことになりました。
「茅乃舎 季節を味わう会」の会員さまだけにお届けするスペシャルコンテンツです。

室礼(しつらい)とは

日本には伝統的な年中行事がたくさんあります。
一年を過ごす上での大切な節目であり、長年繰り返し行われてきたことで、今に伝えられてきました。
例えばお正月。新しい1年のスタートにしめ縄や飾り餅を飾り、お屠蘇を飲んで家族の健康を願います。
そんな風に行事に合わせて、季節のもの、縁起ものを美しく盛り、祈りを捧げる。それが「室礼」の習わしです。

今回みなさまにお配りした敷き板を毎月の室礼の中で使用していきます。
様々な行事を大切に、その由来を学びながら盛物を一緒に作ってみましょう。
神棚や床の間がなくても、玄関の棚やテーブルの上でも、お好きな場所でみなさまの感性を活かしてお楽しみください。

行事は“事を行う”と書きます。先人は行事の一つ一つをおろそかにしませんでした。
今の暮らしの中で取り入れられる室礼で、この美しい文化を私たちの手でも。大切なのは心を込めることです。
一緒に季節の室礼をはじめましょう。

8月のテーマ「お盆」の由来

今月のテーマは「お盆」です。
ご先祖さまや精霊をお迎えする行事で、新暦の8月13日~16日の4日間が一般的ですが、旧暦の7月13日~16日で行われる地域もあります。
餓鬼道に落ちてしまった弟子の母親を救うために、お釈迦さまが供養をすすめた「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏教の故事が由来とされています。

お盆では13日に迎え火を焚いて、御霊のお戻りをお待ちし、お供物をしてもてなします。
そして2日間共に過ごし、16日の夜に送り火を焚いて送り出します。
他にも川に灯籠を流したり、寺社の境内で盆踊りをしたり、各地域で受け継がれてきた様々な風習も見られます。

お盆の室礼とご先祖さまや故人を偲ぶ気持ちで、大切な方の御霊をお迎えしましょう。

用意するのはこの時期に一番おいしい野菜や果物、落雁などのお供物。
そしてお迎えとお見送りにしつらえるのが迎え火・送り火、キュウリとナスの「精霊馬(しょうりょううま)」です。

室礼のポイント/ 敷き板に、お盆菓子をお供え

お供えといっても、我が家には仏壇もなく、どうお迎えすればいいのか……。
はじめての室礼に悩んでいると、「まずは盆菓子を盛ってみましょう」と宮田先生から提案いただきました。

「お盆が近づくとスーパーや和菓子店に色とりどりの落雁(らくがん)が並び始めます」と宮田先生。
かつて甘いものはとても贅沢な食べ物で、落雁を供えることは格別な意味を持っていたのだとか。
蓮の花や果物の形をしたものなど、形や色も様々です。敷き板に供えると、その彩りが一層映えました。

「お迎え団子」「送り団子」といって、お団子を供える風習もあるそうです。
この機会に和菓子店でお盆菓子を見てまわってみるのもいいですね。

「輪廻を表す数珠も添えましょう」と宮田先生が用意されたのは、厄除けの赤い糸に数珠の実を通したもの。
数珠を作りながら、宮田先生自身も子供の頃のお盆の思い出を振り返ったそうです。
ブレスレットやネックレスの他、故人の思い出の品をしつらえても。偲ぶ気持ちが何よりの供養になります。

室礼のポイント/真菰を敷いて、瑞々しい季節のものを

続いては、箱や板などを用意して、一段高い位置に「精霊棚(しょうりょうだな)」を設けます。
お盆の間、御霊はここに滞在されます。

敷き物は真菰(まこも)で編んだ「ござ」を用意。お釈迦さまが真菰で編んだむしろに病人を寝かせて治療したという言い伝えがあり、真菰はお盆の時期にはスーパーなどあちこちで売られているので、手に入りやすいそうです。

「ご先祖さまは長旅でお疲れですから、喉も渇いていらっしゃるでしょう」と、宮田先生が並べたのはスイカ、キュウリ、トマトなど水分たっぷりの瑞々しい旬のもの。「蔓(つる)ものには、ご先祖さまと私たちのつながりを託します」。季節の実りを捧げると、自然の色合いの美しさに気付かされますね。

「故人の好物だった食べ物もお供えすると、きっと喜んでくださるでしょう」。
何が好きだったかなと家族で思い出すひと時も、かけがえのない時間になりそうです。

室礼のポイント/ 御霊をお迎え・お見送りする準備

ご先祖さまや親しい方が御霊となって訪ねてこられた際に迷われないよう、迎え火を焚くのが古くからの習わしです。
13日の夕方に盆提灯を灯したり、玄関先や庭でおがら(麻の茎)を燃やして、「ここがおうちですよ」と目印にするんですね。

「火を使えないマンションなどでは、鬼灯(ほおずき)を火の見立てとして使ってもいいですよ」と宮田先生。
おがらの上に鬼灯を置いて、玄関に飾ります。鬼灯は灯籠草(とうろうそう)とも呼ばれるそうです。

そしてお盆といえば、キュウリを馬に、ナスを牛に見立てた「精霊馬(しょうりょううま)」です。
どんな由来があるのでしょう?

「精霊馬は御霊のための乗り物です。早く戻ってきてほしいのでキュウリを馬に、お戻りはゆっくりとナスの牛で、荷物もたくさんのせられます。割り箸やおがらを使って足にしますが、斜めにカットしておくとうまく刺せますよ」。

ミョウガがあったら、茗荷鳥も添えましょう。爪楊枝を2本刺すと、本当に鳥に見えてきました。

16日の夕方には同じしつらえの送り火でお見送りします。
迎え火と同じもので結構ですが、精霊馬はくるりと向きを変えることをお忘れなく。

また、送り火・迎え火は線香花火を使ってもいいそうです。
「仏さまやご先祖さまにお供えする“線香”の名がついていますし、お子さんも楽しんで飾ってくれると思いますよ」。

8月 お盆の室礼

こちらが8月のお盆の室礼です。
お供えものをして、もてなしふるまう室礼ですが、各ご家庭のスペースに合わせて季節のものや盆菓子をご用意してください。

13日の午前中に敷き板や精霊棚のお供えの準備をして、4日間のお盆の期間が過ぎたら片付けましょう。

「お盆の行事を行うことが減ってきている現代ですが、一年に一度、自分たちのルーツを振り返ったり、ご家族の思い出話をする機会にしてみてくださいね」と宮田先生。


第1回目の室礼は、身近なようで遠のいてしまっていた行事の意味を改めて考える時間にもなりました。
そして室礼とはまさに祈りの空間。「ものに託して、自分の思いを述べる」ことが大切だそう。
自然やご先祖さま、家族や友人への感謝の気持ちを込めていきたいですね。

次回は9月、十五夜の室礼をご紹介します。

お盆の直会レシピ

季節の野菜や果物、行事にまつわる食べ物を供え、その後食すことを「直会(なおらい)」といいます。
毎回、行事に沿った直会レシピもご紹介してまいります。

お盆の時期は暑さも盛り。
精霊馬作りで必要なきゅうりやみょうがを余分に用意して、冷や汁はいかがでしょうか?
サラサラ食べられて、薬味の香りも爽やかです。

冷や汁 レシピ

[材料](2人分)

みょうが
1本
しそ
2枚
豆腐
1/4丁
味噌
大さじ4

A

400ml

作り方

  1. 鍋に【A】を入れて火にかけ、沸騰後、弱火にして味口曽を溶き入れ、火を止めて冷ます。
  2. みょうが、きゅうりは薄切りに、しそは手でちぎる。豆腐は1cm角に切る。
  3. 1に2を入れて器に盛り、お好みで氷を入れる。

宮田 由美子先生

福岡市出身。東京都にて「室礼三千」主宰山本三千子氏に師事。日本に古くから伝わる年中行事をわかりやすく、現代の日々の暮らしの中でもできる室礼を提案している。茅乃舎(2014年~2020年)他、各カルチャー教室にて室礼講座の講師を務める。